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野球小説 続・プレイボール」の【特に印象深かった試合】②

「野球小説 続・プレイボール」の【特に印象深かった試合】②(第49話時点)

谷原戦の次に【特に印象深かった試合】は・・・
魅力的な試合が多く、とても迷いましたが・・・


「準々決勝 明善戦」を挙げたいと思います。


墨高は、前年のやはり準々決勝で、この明善に完敗しています。
今回はその再現です。原作からの流れを感じます。

原作からの流れという点で言えば、エースが昨年のエースと同様にクセ球の投手という点も挙げられます。

以前のエースと同じタイプのエースという意味では四回戦の川北戦も同じです。

ここで気づきました。
この2試合以外の相手投手を挙げてみると・・・

・三回戦 城東戦
松下(墨谷二中出身。谷口と同期。前年の練習試合で対戦実績あり)
大橋(青葉学院出身。丸井と同期で対戦実績あり)

・準決勝 谷原戦
村井(春の練習試合で対戦実績あり)

・決勝 東実戦
倉田(青葉学院出身。イガラシと同期で対戦実績あり)
佐野(青葉学院出身。丸井と同期で対戦実績あり。昨年のブロック予選決勝でも対戦実績あり)

南風の記憶さんは、今回の東東京大会の対戦相手の投手を、全て、原作プレイボール・キャプテンに登場した投手か、あるいは登場した投手と同じタイプの投手にされています。

漫画という映像世界から小説という文章世界に移ったことで生じる可能性のあるデメリットを軽減・解消してくれています。
南風の記憶さんの気配り・優しさですね!
素晴らしいことだと思っています。


少し話がそれてしまいました。
「準々決勝 明善戦」の素晴らしいと感じた点について書きます。

この試合では、先発松川が指の怪我で4失点、井口の予定外のリリーフの失敗で3失点、計7失点というビハインドからスタートし、逆転勝利を収めます。

このようなハラハラドキドキするストーリー展開、野球技術の描写、南風の記憶さんの豊富な語彙による表現力が素晴らしいのは言うまでもありません。

しかし、この「準々決勝 明善戦」を選んだ理由は、これだけではありません。

最も素晴らしいのは、墨高のチームとしての逞しさ、そして選手個々の精神的成長。これらの結実が巧みに表現されている点です。

伝統のある野球強豪校であれば、勝ち上がって行ったときや逆境における心の持ち様や身の処し方は、先輩から後輩に明示または黙示で脈々と受け継がれていきます。
また、そのような高校の場合、多くは優秀な指導者がおり、選手達の精神面に上手く関与し、チームを進むべき方向へ導いて行きます。

しかし、墨高は谷口が入学するまでは弱小であり、進化の過程にあるチームです。指導者もいません。
前年にベスト8に進出し、初めてシード校になったばかりです。

そのような高校が、いくつもの強敵を倒し、甲子園に出場するためには、まずは連戦に耐えうる体力、野球技術や戦術を極限まで向上させる必要があります。

しかしそれだけでは足りません。
心技体の「心」、つまり精神的な強さも極限まで向上させる必要があります。

選手個々の精神的な強さやチームメートを思いやる気持ち、そしてチームとしての団結力、逆境を乗り越えうる逞しさ・・・

これらの精神世界を、南風の記憶さんは、この「準々決勝 明善戦」で描いています。

象徴的なシーンは、指の怪我で苦しい投球を続ける松川が打たれて、谷口が内外野全員を集めて一喝するシーンです。
この後、チームはまとまり松川を盛り立て前半を乗り切ります。

同じシーンにおいて、強い気持ちで続投を志願する松川。
準決勝・決勝の連投が予想されるイガラシを思いやり、リリーフを志願する井口。
打たれた井口を思いやり、敢えて井口に厳しい態度で接するイガラシ。

そしてキャプテン谷口とこの3名をはじめ、チーム全員が、明善戦の勝利、そして甲子園出場のために一丸となって、声を掛け合い、支え合って戦う様・・・

今まで精神面において不安定だった墨高野球部が、甲子園出場校たるに値する精神的な強さを極限まで向上させました。

それが「準々決勝 明善戦」です。そして「準々決勝 明善戦」の素晴らしさです。

このような「準々決勝 明善戦」があるからこそ、「準決勝 谷原戦」の勝利が自然で論理的なものになると言っても過言ではないでしょう。


またまた好き勝手に感想を書かせていただきました。

南風の記憶さん、これからも無理のない範囲で、ご自身のペースで、作品を書き続けてください。
応援しています!


「野球小説 続・プレイボール」
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