前回は、「設定したポイントがバトンゾーンの出口に近すぎた。
多分、1足いや半足分・・・
(1足は山縣の靴のサイズなので27~28㎝、半足なので約14㎝)」というところまで書きました。
多分練習では、想定したポイントで渡せていたんだと思います。
実際、決勝でも多田は、渡せはしなかったものの、一応、山縣の差し出した手にバトンを触れさせるところまでは行ってます。
たた、バトンパスのポイントを、バトンゾーンの出口付近に設定すると、バトンを渡す側(今回は、多田)にプレッシャーがかかります。
自分が本調子でしっかり走れていれば渡せますが、少しでも力んだり、何らかのトラブルがあれば、オーバーゾーンになってしまうと、どうしても考えてしまいます。
私も、高校1年生のときに、チームの第二走者を任され、第三走者の先輩に出口付近で渡すというポイント設定で、リレーに臨んだことがありました。
多田もそうですが、渡す相手は先輩です。
オーバーゾーンだけは避けたい。自分はベストの走りを常にしなければならないというプレッシャーを感じて辛かったです。
幸い、オーバーゾーンになることはなく、前年に先輩達が果たせなかった都大会進出に貢献できたので良かったですが、私が2年生となりチームの中心となった段階で、バトンパスのポイント設定を出口付近に設定するのはやめました。
つまり、今回のオリンピック決勝で、第一走者の多田には、予選よりもバトンパスのポイント設定をより出口付近にしたことによる「失敗できない、ベストの走りをしなければいけない、というプレッシャー」がかかっていたと思います。
さらに多田は、「オリンピック決勝に初出場というプレッシャー」もあったでしょう。
「リレーメンバーで唯一9秒台を出していないからこそ、自分のミスでリレーの金メダルを逃す訳にはいかないというプレッシャー」もあったでしょう。
多田に、これらのプレッシャーがかかり、決勝で本来の走りができない可能性があることは、他のメンバーもコーチも分かっていたはずです。
それでも、バトンパスのポイント設定を出口付近にしてしまった。少しでも失敗したらアンカーがゴールできないという大きなリスクを取ってしまった原因こそ、前回の記事でお話した
「金メダルというとてつもなく大きなプレッシャー」です。
アンダーハンドパスの特性を考えても、あのようなポイント設定は無理がありますし、山縣はとても調子が良く、普段以上に加速が速かったのかもしれません。
これらを踏まえても、やはり今回、日本代表リレーチームは「金メダルというとてつもなく大きなプレッシャー」に負けてしまったと言えるかもしれません。
とても残念な結果ですが、この教訓を今後に生かすと考えるしかありません。
頑張れ!日本の短距離選手!!
これからも応援します!!!